AMED

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構

ゲノム研究における同意の意義に関する法的・倫理的検討と ELSI史アーカイブの基盤構築

現状の課題

ゲノム解析に関わるELSIの取り組みが国内で本格化してから約20年が経過しました。こんにちではELSIに関する取り組みはゲノム研究において不可欠であると考えられるようになっています。一方で,新たな課題もうまれています。
ひとつは,これまでのELSIの取り組みの大部分が現場で生じている課題や外部的要因(国外状況や法改正への対応)への対応に費やされてきたため,ELSIに関する基礎的研究が手薄なことです。たとえば,試料や情報を提供して研究に協力してくださる方の同意については,倫理指針によるルール整備が進んでいますが,ルールの基礎となるべき倫理的・法的な理論面での検討は十分に行われていません。
もうひとつは,ELSIの担い手の世代交代が進みつつあるなかで,過去の取り組みの成果を次の世代に引き継ぐための手段が十分にないことです。国内のELSIに関する知見やルールは,具体的な課題や問題を背景にして生まれたものが多いため,その意義を理解し,将来に向けた検討を行うためには,過去の取り組みの経緯を把握することが重要です。しかし,過去のELSI取り組み─いわばELSI史─を横断的に把握できるような情報源はこれまで存在しませんでした。また,当初からELSIの取り組みに携わり,現在のELSIの基盤をつくりあげた関係者が第一線を退きつつあるいま,その経験や記憶を継承することも急務です。
 

研究の概要

本課題では,2つのテーマに取り組んでいます。ひとつめのテーマは,(1)ゲノム研究における同意の意義についての法的・倫理的観点からの検討です。バイオバンクへの試料・情報の提供の際に用いられることが多い同意方式である包括同意やウェブなどを介した電子的方式による同意(いわゆるeコンセント)に着目して,理論面の課題整理と具体的なあり方について研究しています。ふたつめのテーマは,(2)国内におけるELSIの取り組みの沿革を把握することを目的としたアーカイブ構築の試みです。過去(1990年代後半から2000年代前半)のELSIの取り組みに関わる資料や関係者のオーラルヒストリーを収集・整理して,今後のELSIの取り組みに活用してもらえるアーカイブの基盤を構築することを目指しています。
 

これまでの成果

(1)ゲノム研究における同意の意義に関する検討では,eコンセントについての国内外の議論を比較検討し,①国内では,eコンセントを電子的方式で行われる同意の意思表示ととらえ,その有効性についての議論が中心であるが,欧米での議論ではインフォームド・コンセント(IC)のプロセスにおける情報提供手段としてのICTの利用をeコンセントととらえており,その意義に関する議論が中心であること,(2)eコンセントの意義としては,同意プロセスの効率化,研究参加者の理解の向上,同意率の向上が期待されていることなどがわかりました。また,eコンセントの議論自体が,包括同意やダイナミック・コンセントを含めICのあり方そのものの見直しと関連づけて行われていることも明らかになりました。
(2)ELSI史アーカイブの基盤構築に関しては,1990年代から2000年代にかけての資料を総数にして3,000-4,000点収集しました。これらの資料を電子化し,書誌データ入力してリストを作成する作業を引き続き行っています。また,当時の議論状況を把握するために当時の事情を良く知る方々にお話をうかがいました。この作業を通じて,この時期の資料には公刊やWebでの公開がなされておらず,専門家の間でも共有されていないものが多いこと,政府の委員会等での議論のみならず,当事者団体や関係者によって開催された勉強会などの私的な空間で分野横断的な議論がさかんに行われていたことを確認しました。
 
採択課題名
ゲノム研究における同意の意義に関する法的・倫理的検討と ELSI史アーカイブの基盤構築
研究者名
横野 恵
開始年度
平成28年度
終了年度
平成30年度
ページ作成日
2018年8月30日

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